【数量限定】速醸強力登場です!
■コメント
酒造年:令和4酒造年度 原料米:強力(生産者 数馬豊) 精米歩合:70%
酛種類:普通速醸 使用酵母:協会7号 日本酒度:+10.0 酸度:2.6 アミノ酸度:3.0
【はじめに】
鳥取大学で冷凍保存されていた種子が運よく発芽し、強力米が当地の圃場に復活したのが昭和61年。採種圃で3季年種籾を増やし、昭和64年秋の収穫米で初めて純米大吟醸が生まれました
これは先代の蔵元である山根常愛の取り組みでしたが、そもそものきっかけは、蔵の古老から伝え聞いていた強力なる酒米。現代の低温発酵技術で造りをしたら、どんな味わいが生まれるのか…という好奇心が祖となったものです。
そもそも特性もよく分からない品種を、実践サイズの大吟醸を仕込むということは現在では考え難いことですが、大吟醸酒の全盛期を迎えようとしていた時代背景と、山田錦一強の違和感が駆り立てたと聞いております。
あるエピソードがあります。強力での製造の実現性が見えてきた頃、鳥取県工業試験場(現鳥取県産業技術センター)の酒造技師であった上原浩氏は、最初は中吟醸(精米歩合55%程度)からの製造を進言されたと聞きます。時を同じくして強力米での製造を計画していた中川酒造さんはその進言を受け入れ、中吟醸での製造を予定されたそうですが、うちの先代は大吟醸しかやるつもりはないとその進言を拒否。それを聞いた中川さんも、山根には負けたくないということで方針転換され、両者から強力米純米大吟醸の製造計画が進行しました。
それから数年間、両社ともに強力の酒の製造は純米大吟醸だけでしたが、現当主の山根正紀が丁稚奉公を終えて家業に加わり、大吟醸が持て囃される時代は続かないことを予測。精米歩合を落とした酒のラインナップを加えることを提案するも、先代は「そんな酒を造れば、強力米の価値が下がるだろうが!」と激怒。
数か月に亘り提案するも嚙み合わず、造りの時期が訪れました。この酒造期には強力の純米大吟醸3桶が計画されていたのですが、私が杜氏と精米師を丸め込んで製造計画を書き換え、その1本を勝手に純米吟醸で進めました。さながら密造酒を仕込む感じでした。
この密かな計画は当然ながら途中でバレるわけですが、白米になってしまえば後戻りはできません。先代の怒りが収まるのは、もはや完成度の高い純米吟醸酒が生まれることだけでした。(矢面に立たされた松崎杜氏には申し訳ないことをしたと、今でも心が痛みます。)
幸いなことに先代の怒りは収まり、強力米の新開地に踏み込むことが出来たのでした。
この時に生まれた酒が、「純米吟醸 伝承強力」となりました。
以降、生酛や低精米酒、にごりなども手掛けてきたわけですが、レギュラー純米の基準に値する酒は造ってきませんでした。これは様々なスペックの酒を手掛けたことで、既に強力の潜在能力は確認できていたからです。
では、なぜ今さらレギュラー基準の強力酒を?ですが。
【製品化にまつわる背景】
強力米での酒造りを始めから30余年が経過し、この間の気候変動や栽培法に伴う育稲環境の変化。さらには、生産者や蔵人の入れ替わりなど、造りの変遷は確実に起きています。そこで一度、強力酒の標準値を再認定する必要があるのではないか?と思うようになりました。
まず現時点での基本速醸造りから標準位を設定し、そこからアプローチを変えることで枝葉に分かれる製品群の展開も見直す。言ってしまえば強力版の鳥観図のようなものをつくろうと考えた次第です。
【以上蔵元より抜粋】
色合いは照りと深みある山吹色のお酒です。
香ばしさやビターチョコ、バタースカッチ飴の様な甘みも感じますがしっかりとドライで、日置桜らしいエッジの利いた酸やキレのある味わいは健在。
しっかりと55度以上のお燗でうま味、スパッとしたキレと心地よいほろ苦さや渋さを味わってください。
■おススメの飲み方
熱燗
・蔵元名(所在地):山根酒造場(鳥取県鳥取市)